Tartaruga Type SPORT 専用フェンダー

「自転車のSUV」をコンセプトに掲げ

Tartaruga Type SPORT の開発に着手した時点で、この商品にとってのフェンダーの重要性は、私自身十分に認識しており、量産第一ロットからリアフェンダー取付け用のネジ山は、フレームに用意してありました。
しかし、その「専用フェンダー」の開発には、2年以上の時間を費やすこととなります。

これだけの期間を要した、最も大きな要因は、「ツールを使用する事無く、折畳むことができる」と言う、Type SPORTの最大の特徴をスポイルする事無く、ツールを一切使用せずに、簡単に脱着する事が可能で、その上で自分の考える理想的なフェンダーを目指したからにほかなりません。

自分の考える理想的なフェンダー

以前の私は、自転車にフェンダーを付けるという行為に対して、ある種の抵抗がありました。
私の知る限り、フェンダーを付けた自転車は、どうしてもかっこ悪いネガティブなイメージがあったからです。
では、なぜ自分が、そういうネガティブなイメージを持ったのか?
自分の考える理想的なフェンダーを製作するためには、この点を明確にする事が重要でした。
その結果、以下の3つのポイントが主な要因だという事になります。
– デザイン的な違和感
– クリアランス確保のために、大きすぎるタイヤとフェンダーの隙間
– プルプルとゆれてしまう、不安定な取付け

これらを解決した上で、ツールを使うことなく簡単に脱着ができるフェンダーこそが、私が作るべき理想的なフェンダーだという事になります。

脱着方法

フェンダーを作っているメーカーは多くあり、脱着可能なフェンダーを作っている様々なメーカーのカタログやサンプルを取寄せて検討を行いましたが、なかなか理想的な脱着方法が見つかりません。
脱着式を謳う多くのフェンダーが、シートポストにベルトで締め上げるタイプや、フレームにゴムベルトで縛り付けるタイプの物が多く、私が解決すべきだと決めた3つのポイントを解決できません。

ようやく見つけた台湾のフェンダーメーカーが開発した新型フェンダークリップ
更に色々なメーカーを当たっていくと、ある台湾のフェンダーメーカーが新型のクリップ式の脱着式フェンダーを開発した事を知り、早速その会社を訪問して色々と話をして、私の提案したフェンダー本体の試作と、当時入手可能だった取付け部サンプルの入手手配を行ってもらうことになりました。

NASCARのレースカーをイメージした、オレンジとブラックの二色成型のフェンダー試作
届いたサンプルを早速車両に取付けて検証してみたところ、Type SPORT に最適させたマウント用フレームを新規製作すれば、理想に近い脱着式フェンダーを作れる事を確信しました。
NASCAR(アメリカでメジャーな自動車レース)のレースカーをイメージした二色成型のフェンダー本体の試作に関しては、残念ながらコストやミニマムロットの問題等により、採用を断念せざるを得ない状況となり、汎用のクロを採用する事になりました。

脱着式とは思えない、剛性感を出すために

最も重要なリアフェンダーに関しては、その長さから、簡単に脱着ができるのに、取付けるとプルプルと揺れる事の無い、充分な剛性感を出すためには、フェンダーメーカーの開発したクリップとマウント用フレームによる2点固定だけでは十分といえません。
リアフェンダー前端を、車両のフレームに固定する必要があります。
前出のフレームに設けた、リアフェンダー取付け用のネジ山を利用すればいいのですが、どう固定するかが問題でした。

この問題を解決したのは、前職ナムコ時代の経験でした。
板金で作られた筐体(キャビネット本体)に、各種配線用のケーブルを取り廻す際に、筐体に開けた穴にケーブルを通す必要がある場合、開けた穴のエッジが、その穴に通すケーブルを傷つけやすいため、ケーブルを保護する目的で、この穴に「グロメット」と呼ばれるゴム製のリングをはめることがあります。

本来は、板金筐体内部の配線の保護に使用する「グロメット」
この「グロメット」を逆転の発想で使用して、本来ケーブルが通る貫通穴を利用して、グロメットを車両フレームに固定して、本来は板金に空いた穴に装着する全周に設けられたスリットに、フェンダーの先端に取付けたU字型のカットをもつ板金を挿入する事で、3点固定の強固な取付けが可能となりました。
「グロメット」を使用する事で、もう一つの懸念事項だった、取付け部からのノイズの発生も抑制できます。

「グロメット」取付け時のクリアランスの確保

日本製「超極低頭ネジ」を採用して、取付時のネジ頭の飛び出しを、極小に抑えた。
3点目の固定に、「グロメット」を使用する事を決めて設計を進めていくと、新たな問題にぶち当たりました。
当時の3つあったType SPORT のグレードのうち、SDグレードには他の2グレードとことなり、20 1-3/8という、少し太めのタイヤを標準装備していました。
エントリーグレードという事で、より乗り心地を重視した結果のセレクトでした。
20 1-1/8を装着したモデルでは、「グロメット」取付けに使用するネジは、通常のネジ頭で問題ないのですが、SDではネジ頭がタイヤに干渉する場合がある事が分かりました。
この問題を解決する為にたどり着いたのが、日本製の「超極低頭ネジ」の採用でした。

折畳み後のフェンダーの仕舞方

車両を折畳んだ際、取外した前後フェンダーの仕舞方法は、この画像の様に前輪の上に重ねて置き、車両に付属の裾バンドで固定してあげると完璧です。

これらの経緯を得て完成した「Type SPORT 専用フェンダー」は、脱着式とは思えないしっかりした剛性と質感と、装着後の完璧ともいえる一体感は、一見しただけでは、フェンダーを装着している事に気がつかない程です。
その走行性能に、高い評価をいただいているType SPORTの使用フィールドを、更に広げる価値ある専用パーツです。