「宿野輪天堂」の岡田さん

今回は、これまでも当ブログで何度かご登場

いただいている、「宿野輪天堂」店長(代表)の岡田さんのお話です。

自分とよく良く似た、考え方を持った人物がいる

Type FOLDING の企画中、試作を作ってくれる処を探して、奔走していた頃に、インターネットで、自転車に蒸気機関や、ジェットエンジン、風力発電機の電力回生装置を備えた電動などのアシスト装置のついた、とんでもない商品をつくっている日本人がいる事を知ります。
その人物こそが、「宿野輪天堂」の岡田さんでした。

これらのパワーアシスト自転車は、単に奇抜なだけでなく、例えば、風力発電機による電力回生装置を備えた、電動アシスト「エレクトリックボブ・タイフーン」には、その風力発電機を使用してボイラーを動かし、ボイラーで発生させた蒸気で、エスプレッソコーヒーを淹れる装置が、さりげなくフレーム中央に取付いているなど、その遊び心とセンスに、とても惹かれました。
と同時に、自分ととても良く似た、物作りの考え方を持った人間なのだろうなと、心の隅で、とても気になる存在となりました。
その当時、「試作を作ってくれる処が、どこも見つからなかった時には、彼を訪ねるしかない。」と、心に決めていましたが、幸いカネコレーシングの金子さんとの出会いがあり、実際に訪ねる事はありませんでした。

出会い

Type FOLDING 発売開始直後に参加した、東京国際自転車展で、展示している Type FOLDING の傍らに立つ私の前に、ピンク色の木製スケーター「ハネモク」を、カラカラと引いた、変な男性が立ち止まり、声を掛けてきました。
「ひょっとして、「宿野輪天堂」の岡田さんですか?」と尋ねると、「そうですよ。」との回答。
「お会いしてみたかったんですよ~」と、素直な自分の気持ちを告げ、その後、立ち話が盛り上がり、お互い同じ歳だという事も知り、色々な意味で意気投合して、それ以来永きに渡り、家族ぐるみでお付き合いいただいています。
その後、2004年には、2人で企画をした、「バイクデザイナーズミーティング」を開催したりもしました。(こちらのお話は、また改めて。)

宿野輪天堂

みずからを「山奥の秘密基地」と名乗る、「宿野輪天堂」は、1994年に代表の岡田さんが、大阪府の宿野に設立されました。
「秘密基地」という表現がぴったりのこの工房から、「クワハラ・ゴブリン」、「クワハラ・ガープ」、「カイユウ」など、数多くの名作達が生まれています。

元々、実業団の自転車競技選手を目指していた岡田さんは、1989年に「桑原輪業株式会社」(現・クワハラ)に入社し、コンピューターによる自転車専用設計システムの開発と、現場での自転車製作を平行して担当し、自転車の製造に広く関わられたのち、同社を退社。
退社と同時に「宿野輪天堂」を設立され、ご自身の想いを、より前面に出した商品開発に着手されます。
私と異なり、「超」が付くほど、自転車畑出身の岡田さんですが、その商品開発のコンセプトは、「スポーツの道具という一面を横に置いて、乗り物という面からもっと自転車を楽しむのなら、自転車のエンジンが人間だからこそ、エンジンを元気にする自転車にしたい。」と、全くの偶然ですが、私の掲げる弊社製品 Tartaruga のコンセプトと、驚く程似ています。
しかし、流石にそのアプローチの仕方や、プロジェクトの進め方は、全くの正反対と言い切れるほど異なっていて、この相違点が、今でも岡田さんと色々な話をしていて、とても刺激を受けるポイントなのかもしれません。
そのおかげで、こんなにも長くに渡り、「親友」と呼べるいい関係を、続けられるのだと思います。

「カイユウ」の発表以来、暫く活発的な活動を控えているかに見える岡田さんですが、先日、宿野輪天堂にお邪魔した際には、以前は無かった、様々な工作機械が新たに導入され、自転車に限らず、これらを活用した様々な試作品を、作り続けているようです。

10年後、20年後に、お互いどんな「クソジジイ」になっているのか、とても楽しみです。