「レ・ジェ」で挑んだダウンヒル 2005 その2
1990年代後半の事ですが、当時所有していた
マウンテンキャットで、一度だけ「富士見パノラマ」で、ダウンヒルを体験した事がありました。
オートキャンプを楽しんでいた頃で、友達数名と、「富士見パノラマ」の近くでキャンプをして、そのキャンプ中の遊びとして、やってみたわけです。
初めての挑戦でしたので、初級コースから始めて、中級コースまでは何とか走れた記憶がありますが、コース幅が狭い箇所が多く、かなり怖い思いをしたように思います。
本格的なダウンヒルバイク
Astrix の ‘Stryke’ というダウンヒルバイクを借りて、この日は、わたしもダウンヒルに挑戦です。
ライアンの設計した、26インチ、トラベル量160㎜の、かなり本格的なダウンヒルバイクで、以前所有していて、富士見パノラマで使用した、リジットフレームの「マウンテンキャット」とは、大違いです。
ダウンヒルの予定など、全く無かった私は、当然、何も用意をしてきていなかったので、ステインからヘルメットとニープロテクター(膝当て)を借りて装着し、キャンプサイトで朝食を済ませ、皆と一緒に私も出かけました。
バイクパークに着くと、チケットを購入し、すぐにゴンドラに乗込みました。
ゴンドラの外側には、バイクラックが装着されていて、各自のバイクを積み込んで、一気に中腹まで登っていきます。
初級コース
ゴンドラには、ライアンとステインの、いつもの3人組で乗込み、空中散歩をしながら、大まかなコース説明を受け、先ずは初級コースを行ってみることにしました。
ゴンドラの終点に着くと、早速下りはじめます。
ステインが先頭を、私が次につづき、ライアンは後ろについて、それぞれのシチュエーションごとの乗り方について、大声であれこれ指示を出してくれます。
以前走った、富士見パノラマのコースとは、比較にならない広大な規模のおかげで、コース幅も十分に確保されているため、序盤はとても走りやすい森の中のコースが続き、ライアンの的確な指示の御蔭もあり、所々ちょっと怖い思いをするものの、とても快適に走る事ができました。
やがて、先行していたステインが止まって、我々を待っていました。
合流して止まると、その先にこのコース最大の難関が待ち受けていたのです。
最大の難関
森の中を走ってきた、ここまでのコースから、開けた空間に出るポイントで、突然途切れていました。
自転車を倒して、コースの先まで行ってみると、途切れたコースの先は、6m位の高さの切り立った崖の様になっていて、その崖を下ると、その先にまたコースがつながっています。
「おい!まさかここを下りるのか??」青ざめながら私が訪ねると、「オフコース!ノーチョイス!!イッツ、イージー!」と、すかさずステインが答えました。
「お前にはイージーでも、オレは初心者だぞ!できる訳ないだろ!!」と、半分キレて叫ぶ私に、「ジャスト、ドゥーイット、ライクディス‼」と言い残し、ステインは「ストン」と、事も無げに飛び降りていきました。
後で、ライアンに聞いたところ、斜度で45度くらいだったそうですが、その時の私には、どう見ても切り立った、90度の断崖絶壁に見えました。
余りにも私が、ビビっているのを見かねたライアンが、懇切丁寧に、こう言った箇所の落ち方(飛び方?)を、身振り手振りを交えて、英語でレクチャーしてくれました。
要約すると、「サドルに座るのではなく、後輪の上に軽く腰掛ける位の感覚で、腰を極端に後ろに引いてジャンプして、着地の瞬間は、足をバネのようにソフトに使えば大丈夫だよ!」と言った内容でした。
なるほど、何となく理屈はわかりましたが、下を見るとやっぱり怖い・・・
とはいえ、ここでモジモジしていても、全くらちがあかないので、まさに清水の舞台から飛び降りる思いで、ありったけの勇気を振り絞って「おりゃ~~~」とばかりに、飛び降りてみました。
すると、ストンとあっと言う間に着地していました。
「あ!出来た!!」
着地の瞬間も、ガツンと来るような大きな衝撃は無く、トラベル量160mmのサスペンションが、綺麗に衝撃を吸収してくれたようです。
流石は、「ショックガイ」と呼ばれていた、ライアン設計のダウンヒルバイクです。
うまく下りられた事で、「ガクガク」から、「ドキドキ」に、そして「ウヒョ~~!」へと感情が変わり、変なアドレナリンが、脳内に出ているのが、わかるような感覚でした。
この難関を突破した後は、ちょっとした段差やデコボコも、恐れる事もなく、一番下のゴンドラ乗り場付近まで、下っていけました。
もう一回!
下では、昨日一緒にキャンプした育成チームのメンバーも含め、皆が、一休みしてくつろいでいました。
そこへ合流すると、すかさずステインが、からかってきます。
「こわい、こわ~い! もう辞めるだろ?」
しばらく考える、私。
そして、「いや、もう一本下る!」と答えると、「いいね!」とハイタッチしてきました。
彼らに、私のレベルに付き合わせるのは、気が引けるので、ここからは別れて、一人で登って、下る事にしました。
2本目は、当然さっきよりは上手く走れ、あの難関も、一瞬の躊躇はあったものの、ストンと、ここもさっきよりは上手く下りることが出来ました。
「ダウンヒル、面白いかも!」
柄にも無く、そう思った私は、下りきると、またゴンドラに乗り込ました。
途中で様子を見に、合流してきてくれたライアンが、先行して時折待ち構えて、写真を撮ってくれました。
余談ですが、その時ライアンが撮ってくれた、このページの TOP 写真は、翌年のAstrixの製品カタログに使用されました!
因みに、私と別れてからのステインの写真はこちらです。
本気の人は、凄いですね。
海外で、初めて体験した本格的なダウンヒルは、そのスケールに圧倒されると同時に、初心者ながら、満足感もひとしおでした。
各々、心ゆくまでダウンヒルを満喫して、その日の午後、私とライアンとステインの三人は、皆に別れを告げ、「レ・ジェ」を出発して、「ユーロバイク」の会場、ドイツのフリードリヒスハーフェンを目指して、出発しました。
つづく
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