Tartaruga Type RECUMBENT その4
- 2018.10.23
- タルタルーガ
- Type RECUMBENT, 自転車, 開発
最初のデザインが完成した時点では
ミズタニ自転車さんからの販売は決まっていましたが、作ってくれるところは未定でした。
Type FOLDING の経験から、Pacific Cycles 社にて、開発と生産を行いたいとの希望はありましたが、当時の私とPacific Cycles 社の関係は、Type FOLDING の実績のみでしたので、Pacific Cycles 社に製作依頼に訪れる、多くのデザイナー達と同様、ジョージさんにプレゼンテーションを行い、Pacific Cycles 社で開発を行う価値があるのかの、ジャッジを受ける必要がありました。
Pacific Cycles社 ジョージさんへのプレゼン
出来上がったデザインその物には、自信はありましたが、よりいいプレゼンを行う事で、万全を期したいと考えました。
そこで、京都に住む友人に連絡を取り、事情を説明して、京都の神社仏閣の写真をデジカメで撮影して送ってもらい、簡単なスライドショーを製作して台湾へ向かい、プレゼンに挑みました。
その結果、私の提案したコンセプトとデザインを、ジョージさんもいたく気に入り、「よし、作りましょう!」と、開発に快諾をいただき、更にその年の3月に開催される、台北ショーに、Pacific Cycles 社ブースから出品することが決まりました。
2003年1月初旬の事です。
開発スタート
プレゼン後、一旦帰国した私は、初の2ヶ月以上の台湾滞在に備えて、初めて滞在ビザを取得して、再度台湾へと向かいました。
そこから台北ショー迄の2ヶ月間は、Pacific Cycles 社の業務開始時間の朝8時から、夜の10時まで、連日プロトタイプの制作に、文字通り没頭しました。
基本設計の段階で、自分としは、形状と作りの面に関して、十分に考慮していたつもりでしたが、実際に「カタチ」にしてみると、様々な問題が発生しました。
中でも、溶接による素材の変形は、最も大きな問題でした。
その当時の私も含めて、一般的にはあまり知られていない事実ですが、アルミ素材同士の溶接を行うと、必ず溶接によるヒキツレ等による変形が発生します。
アルミフレーム作りは、この「溶接による変形との戦い」といっても、過言ではありません。
Type RECUMBENT のフレームは、その溶接を多用する形状だったため、まさにこの変形との戦いでした。
特に溶接が集中する、メインフレームのリアサスペンション取り付け部と、溶接をほぼ行わない、後部ファームフレームエンドとの境界辺りで、大きな変形が発生して、熱処理を掛けると、その変形は、更に大きくなってしまい、「への字」に曲がったフレームが出来上がりました。
この問題の解決に苦慮していた私に、ジョージさんがひとつの解決策を授けてくれました。
その解決策を実践すると、見事に変形が抑えられました。
さすがはジョージさん、当たり前ですが、経験値が圧倒的に違います!
フロントブレーキ
フロントブレーキの取付け位置も、頭を悩ませる問題でした。
フロントフォークの形状的に、通常の取付け位置には付けられなかったからです。
現物による検証を重ねた結果、フロントフォークのリア側のあるポイントに、角度を付けて取付けると、操作性にも影響を与えずに、取付けができるポイントを見つけました。
こうして、様々な問題を、ひとつずつ潰しながら、乗車可能な最初の試作フレームが完成しました。
この2ヶ月間の集中開発期間を通して、ジョージさんをはじめとするPacific 社のメンバー達と、私の距離は、急速に親密感を増し、お互いの間に、硬い信頼感が生まれて行きました。
つづく
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