Tartaruga Type RECUMBENT その5
- 2018.10.30
- タルタルーガ
- Type RECUMBENT, 自転車, 開発
2003年の台北ショーへの展示を目指して
Tartaruga Type RECUMBENT のプロトタイプ制作は進みました。
車両本体の制作に加えて、もうひとつの重要な専用オプションパーツの制作も、同時進行で進めました。
キャノピーの試作
もうひとつの挑戦だった 「雨の日にも乗れる」為の、専用キャノピーの制作も、スムーズには行きませんでした。
当初、キャノピー両サイドのメインフレームには、カーボン製振り出し式の釣竿の本体を、採用する事を計画していた私は、台湾へ行く前に、自宅近くの釣具屋で、2m程の中国製の振り出し竿を2本購入し、サンプルとして持参していました。
このアイデアには、ジョージさんもいたく気に入り入り、業者を探し検討を行いました。
しかし、こちらの仕様に対して、特注で制作を行うと、現実的でないミニマム数量の生産が必要となり、結果的にカーボン製振り出し式のフレームは、断念する事になりました。
ドームテントのフレーム
次に私が目を付けたのが、アウトドア用ドームテントのフレームでした。
アルミ製のポールに、継ぎ手の部分が圧着されていて、ゴムケーブルで連結されたあれです。
そのアイデアを、ジョージさんに説明しましたが、キャンプ経験の無いジョージさんにはピンと来てもらえず、会社の近くにあるアウトドアショップを探し出して、二人でテントをみに行きました。
現物を見せると、すぐにその良さを理解してもらえ、「これなら当社(うち)で簡単に作れるよ。」と、その場で素材業者に電話をして、材料手配をしてくれました。
翌日には必要な素材が工場に届き、早速組み立ててみたところ、簡単に製作する事が出来ました。
キャノピー本体
キャノピー本体の制作も、同時進行で進めました。
使用しない時には、小さく丸めて、部屋にしまっておけるようにという仕様から、透明塩ビにテント生地を縁取りした、オープンカーのキャンバストップの様な物を、製作しようと思っていました。
こちらも、テントの縫製を行っている会社を探し出してアポを取り、ジョージさんと二人で訪問しました。
幸運にも、この会社の社長に直接対応をしていただいたので、我々が今作ろうとしているキャノピーの話をすると、その社長もとても興味を示してくれ、「うちで作りましょう!」と、心強い約束をしてくれました。
早速、最新の仕様のパーツ構成案を考え、各パーツの寸法を決め、それぞれのパートで試作品の製作を進めました。
台北ショー
関係各位のガンバリのおかげで、台北ショー直前、搬入日前日の夕方には、2台分の全てのパーツが揃い、組立を始めました。
どの製品の開発でもそうですが、この試作品の組立を行う瞬間が、最も楽しく、最も興奮する時間です。
この時も、ワクワクしながら組み立てました。
組み立ても終盤に差し掛かり、最後のキャノピー関連のフレームを組んでいた、夜10時半ごろの事です。
ノイズ止めと、傷つき防止を兼ねたプラスティックパーツを圧入する際に、私があやまってアルミパイプを大きく変形させてしまい、組立ができなくなる事故が発生しました。
「あ~もうだめだ、明日の搬入に間に合わない・・・」と、あきらめかけていた私に、一緒に組立作業を手伝ってくれていた、Pacific社の試作担当社員が、「何とかなりますよ!」と、木槌と鉄製の棒を使い、20分程かけて修復してくれました。
その時の私にとって、彼はまさにゴッドハンドの持ち主でした。
あの夜の事は、未だに鮮明に覚えています。
フレームを組立て終え、納品されていた塩ビ製のキャノピーを広げて、取付けを行うと、寸分たがわぬ寸法精度で、全てがうまく取付きました。
完成した試作車2台は、翌朝、ショー会場行きの搬入用トラックに積み込まれ、会場へと運ばれ、その年のPacific社ブースのメイン商品として、無事展示され、その翌日から台北ショーがはじまりました。
つづく
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