「Type SPORT」誕生 その6 REACHとの差別化 フレームデザイン、ハンドル編

「Type SPORT」誕生 その6 REACHとの差別化 フレームデザイン、ハンドル編

REACHとの、キャラクターの差別化のキーワード

を、「自転車のSUV」と決め、専用の前後キャリアーのデザインと設計を進めていく過程で、デザイン的に、車両との一体感のあるキャリアーを目指した結果、フレームデザインそのものについても、細部に手を加えることにしました。

フレームデザインのブラッシュアップ

タルタルーガ自転車タイプSフレーム既に完成の域に達していた、ジオメトリーはそのままに、車両のフレームデザインについて、デザインスタジオである弊社ならではの、更なるブラッシュアップを意識しました。
サイドビュー(真横からの見ため)での、フレームの各構成要素に、直線的な繋がりの要素をより取入れるべく、流れというか、法則を追加する事で、よりデザインの完成度をあげる手法を取りました。
具体的には、フレームを折畳む際にも使用する、フロントメインフレームの可動軸を支える、両サイドのプレートの形状を、リアスイングアームの BB 部形状の延長線上と重なるラインに変更して、この部分のデザイン的なまとまりと、剛性感アップを行いました。

タルタルーガ自転車タイプS折畳みBBポケット
両サイドのプレートは細部形状を変更

この形状変更により、フレームを折畳んだ際、BB がこの両サイドのプレートに干渉してしまうため、プレートに「BBポケット」と名付けた切り欠きを追加して、この問題を回避しました。
また、この両サイドのプレートには、軽量化の為の肉抜きとして、元々丸い穴が開いていましたが、この変更で、面積の増えた分、外形に沿った四角い形状に変更し、軽量化とデザイン性を両立しました。
リアスイングアームの形状も、上部パイプを、フロントメインフレームのダウンチューブ(下側のパイプ)の延長線上につながる形状となる様、3次元の曲げを施した形状に変更しました。

Tartaruga 専用オリジナルパイプ

タルタルーガ自転車タイプSタルタルーガ専用パイプ
トップチューブ等のポイントに、Tartaruga 専用オリジナルパイプを使用
トップチューブとメインフレームの一部パイプには、Type FOLODING 開発時に、型を起こして作製した、台形状の「Tartaruga 専用オリジナルパイプ」を使用することで、Tartaruga のアイデンティティーとしました。
このパイプ形状は、持ち運んだり、持ち上げたりする際につかむ、親指と人差し指の形状に沿う事を考慮した、機能的な形状となっています。
また、一般的に自転車のフレームに使用される丸いパイプでは、塗装を行ったフレームカラーに対して、全体的にグラデーションが掛かってしまうため、フレームカラーは、正にこの色ですと説明しにくいと考え、わずかに張りのある円弧基調の平面で構成さえた、台形状とすることで、色を面で見せ、エッジ部に入るシャープなハイライトラインを境に、大胆に明暗の陰影を持たせる効果を狙った、直線基調のTartaruga らしい形状にデザインしてあります。

無限の乗車姿勢を生み出す、ハンドルとステム

細部のデザインのブラッシュアップにより、形状的なアプローチがある程度見えて来たので、次に機能的な面からのブラッシュアップに取掛りました。
ロードレーサーに代表される、スポーツ自転車の世界は、レースを中心とするその長い歴史の中で、もっとも効率が良いとされる、セオリーの様なものが出来上がっています。
乗車姿勢などはその最たるもので、ライダーの体を計測すると、その人にベストなライディングポジションが、計算式で導きだせるほどに、成熟しています。

以前にも書きましたが、当時の私は、それほどスポーツ自転車に対して興味自体を持っていなかったわけですが、そんな自分が乗っても気持ちよく走れる車両という点が、私の作る車両には、何よりも大切だと考えていました。
例えるなら、ママチャリの様な楽な乗車姿勢で、凄く良く走るロードレーサーの様な車両に乗ることができたら、ロードレーサーとかの世界には興味を持たない「普通の人々」も、楽しめるのではないかと考えたからに、他なりません。

タルタルーガ自転車タイプSハンドル
様々な形状のハンドルを取寄せ、実際に車両に装着して比較
このアイデアを実現するために、様々なハンドルバーとステムの組み合わせを、サンプルを取寄せ、実際に試作車両に装着して走行し、比較を行いました。

私が中学生時代に、通学で使用していたジュニアロード車にも装備されていた、セミドロップハンドルも試しました。
私の中学生時代は、格好重視ならグリップがステムより下側になる様取付け、楽に乗りたければ、グリップが上に来る様に、とりつけるスタイルが流行っていました。
このセッティングを試してみましたが、当時感じた程の効果を感じませんでした。

タルタルーガ自転車タイプSハンドル
量産に採用した、ハンドルとステムの組合せ
色々試した中では、上下に可変調整ができるステムと、ライザーバーと呼ばれる、ステムにクランプする部分と、グリップ部の高さに、段差のあるハンドルバーとの組合せが、最も顕著にポジションの違いが作れ、アップライト(上体を起こしたママチャリライクな、乗車姿勢)も、前傾ポジション(前かがみになる、スポーツバイク的なポジション)も、良い感じで調整可能な事がわかりました。
更に、前出のセミドロップハンドル逆向き取付け的な使い方や、思い切り前方下方へと突き出す、常識ではあり得ない様なポジションまで作れ、しかもその状態も、悪くない操作感が得られることも、検証できました。

正に、一台で「ママチャリの様な楽な乗車姿勢で、凄く走るロードレーサーの様な車両に乗ること」もできて、「前傾ポジション」も普通にアレンジできるという、Tartaruga 的に理想的な組み合わせを、発見できたわけです。

つづく