チンクェチェント 乗り物の基本

チンクェチェント 乗り物の基本

幾度もイタリアを訪れる中で、料理とワイン以外に

私が強く興味を惹かれたものが、もう一つありました。
それが「チンクェチェント」の愛称で親しまれている、「FIAT 500」でした。
「チンクェチェント」とは、イタリア語で「500」という、数字の読み方になります。
現在では、同名の現代版が販売されていますが、私がイタリアへ行き始めた頃は、まだ発表すらされておらず、オリジナルが存在するのみでした。

ダンテ・ジアコーザ

タルタルーガ自転車イタリアチンクェチェント著名なカーデザイナー、ジュージアローの師匠である、「ダンテ・ジアコーザ」のデザインによるこの車は、戦後イタリアの国民車構想の実現の為に、企画され開発されました。
「ルパン三世」の愛車として、日本でも有名な「チンクェチェント」は、1957年に発売され1975年まで、その外観を、一度も大きく変える事無く、実に18年間にわたり生産され続け、まさにイタリアの国民車として、イタリア中で愛用されてきました。

名前のしめす通り、排気量が500ccしかない小さな空冷2気筒、18馬力程のエンジンを、後部座席の後方に搭載して、4速マニュアルミッションで操作するこの車は、大人4人が収まるスペースを、日本の軽自動車規格よりも小型の車両で実現していて、「メカミニマム・マンマキシマム」を先駆ける、先進のパッケージは見事ととしか言えません。
北に、アルプスを抱えるイタリアの国民車だけあり、ローギアでの登坂性能はかなりの物ですが、その引き換えに、車内に響き渡るエンジン音を軽減する為、キャンパストップを採用して、その騒音対策としています。

何と言っても、「セマルハコガメ」にも似た、その愛くるしい外観は、見る者全てを笑顔にしてしまう、不思議な魅力に満ち溢れています。

元気に走り回る、下駄の様な存在

タルタルーガ自転車イタリアチンクェチェントイタリアへ行き始めた頃、何処へ行っても、街中で必ず目にした「チンクェチェント」達は、ピカピカ磨きあげられた、俗に言うビンテージカーとは真逆で、色褪せて、錆びたり凹んだりした、生活の中に溶け込んだ、イタリア人達の下駄の様な存在でした。
どんな田舎の街に行っても、目にするその愛らしいポンコツ達は、皆同様に、「バタバタ」と音を立てながら、元気に走り回っていて、逆にその様が、とても私の心に訴えてきました。

購入

タルタルーガ自転車イタリアチンクェチェント起業を決め、前職を退社した私は、ある出来事をきっかけに、ずっと気になっていた、この「チンクェチェント」の購入を決めます。
職場の先輩が、たまたま「チンクェチェント」を所有していて、その先輩が購入した「TCガレージ」という ‘チンク’(FIAT 500 のオナー達は、愛情を込めて、こう呼びます。)専門店が、自宅からそう遠くない所にあることを知り、お店を紹介してもらい、購入に至りました。
「チンクェチェント」は、イタリアの車です。
イタ車といえば、赤。
この専門店を、私が訪れた際に、希望していた赤色の「チンクェチェント」が、たまたま在庫としてあった事も、購入を決めた大きな要因でもありました。

購入時に、TCガレージの店主清水さんに勧められ、試走する事になりました。
助手席に清水さんを乗せ、走り出した「チンク」は、まるで遊園地のゴーカートの様で、「こんなので、本当に公道を走って良いんですか?」と、大声で確認してしまう程でした。

Tartaruga との共通点

タルタルーガ自転車イタリアチンクェチェントこうして購入した、私の「チンク」は、オリジナルの製造が、1974年ですから、既に45年程が経過しています。
イタリアでフルレストアを行った後に、日本へやってきた為、最初の登録は、新車での登録で、既に20年近い付き合いになります。

18年間生産が続いた「チンク」の、最後期型の「R」型で、イタリアで650ccにボアアップも施されていて、今でも、元気に走り回っています。
今時のハイテク装備は勿論、エアコンも、カーラジオすら付いていない、電子制御とは無縁の、わずか23馬力程しかない、この愛車は、構造も至ってシンプルです。
購入初期には、それなりに不具合も出ましたし、ちょっとした、癖のようなものもあります。
ただ、構造がシンプルなだけに、大抵の不具合は、「TCガレージ」清水さんの指導のもと、自力でも、何とか修理する事ができるため、益々愛着が湧いてきます。

運転すると「乗物を操る事の、楽しさ」に溢れている、その走行感覚は、まさに Emotional Vehicle!
「乗り物とは何か」という、とても大切な事を、教えてくれている気がします。
起業直前に、たまたま購入した「チンク」ですが、偶然にも、弊社の Emotional Vehicle Tartaruga シリーズに通ずる、独特の楽しさに満ち溢れているなと、運転する度に思うのです。