Tartaruga Type SPORT イージーフォールディング 2
「イージーフォールディングアダプター」に関する
基本構想と、大まかな位置関係も決まり、各部の具体的な設計作業を開始しました。
クランプ部の素材と製造方法選び
前輪は、前輪に付属のQRレバーを使って固定すればいいので、適正な厚みのあるスリット(切れ込み)を設けたパーツを作ってやればよかったのですが、ハンドルステムを取付けるクランプ部の形状と素材選びが問題でした。
私が目指した、アダプターへのハンドル取付け時のイメージは、「合体ロボットのドッキング」でした。
文字通り「ガチャン!」と、ドッキングさせたいと考えましたが、理想的な「ガチャン!」具合を見つけなければなりませんでした。
また、使用する素材についても、アノダイズド処理を施したステム部を、何回も脱着する必要がある事から、ステム表面に傷をつけない素材である事も重要な要素です。
そこで、弾性のある特殊なポリマー樹脂を、素材に選びました。
弾性がある特殊樹脂で、機械加工が難しいため、コスト的には高くなりますが、素材自体も摩耗や傷に強く、素材自体がクロ色で塗装の必要も無く、なにより耐久性も高い点で、この素材を選び、量産も数量の問題から、一点一点CNCマシンによる削り出しにて生産を行うことにしました。
「ガチャン!」感の追求
「ガチャン!」感に関しては、クランプ部の形状と、ベースとなるアルミ板金の厚み等が複合的に作用しあった結果で生まれる感覚的な要素の為、いくつか試作を行い、実際に試してみるしかありませんでした。
また、この樹脂素材は、塊に穴を開けるだけなら、その直径を加工した寸法通りに維持できますが、ハンドルステムをクランプするためには、穴の一部を切欠く必要があり、切欠いた途端に変形して、穴の形状が小さくなります。
これらの条件を考慮して、先ずはこれ位の形状かなと予測を立て、試作形状の設計を行いました。
当時は、既に3次元CADによる設計が当たり前になっていたので、3次元CADを使い設計を行い、その3DデータをCNCのオペレーターに渡すと、2時間後にはCNCで削り出された試作パーツを受け取れました。
削り出された試作パーツを、アルミ板金で制作したベースパーツの試作に取付け、ハンドルステムの取付けを試しましたが、キツ過ぎて上手くはまりません。
開口部を、更に大きくして、開口部の角Rも大きくして、次の試作を行い試したところ、最初の物よりも若干良くなりました。
この様に、3次元CADで設計してはサンプルを作り、試してはその結果を反映させた新たな設計と試作を行い、テストを何回も繰り返し、製品版のあの「ガチャン!」感に、ようやくたどり着きました。
因みに、取付けたハンドルを取外す場合、フラットハンドルの場合は、クランプ部をハンドルバー側にできるだけ押し出す様スライドさせてから、ハンドルバーを下へ押すと、簡単に外れます。
ドラップハンドルの場合は、ヘッドチューブ側のハンドルを持ち、持ち上げると、反対側がトップチューブ上面に押し当てられることで、テコの原理で簡単に取外せます。
前輪固定用のQRレバー
比較的簡単だと考えていた、前輪取付け部への固定も、車両に付属の「カム内臓型」のQRレバーではストロークが短く、アダプターへの固定時に、毎回ナット側を大きく調整する必要がある事が分かり、この問題を解決する為に、ストロークの大きい「外部カム型」のQRレバーを、「イージーフォールディングアダプター」に付属させることにしました。
また、前輪の取外し後に、QRレバーのクランプ力調整作業を最小限に抑えるために、「イージーフォールディングアダプター」側の、前輪取付け部の厚みを最適化して、前輪の脱着から「イージーフォールディングアダプター」への取付けの一連の作業を、可能な限りスムーズに行えるよう調整しました。
※現行SDとGTは、ハブメーカーの仕様変更により、車両付属のQRレバーは「外部カム型」となっています。
「イージーフォールディングアダプター」完成、発売開始
2011年5月末の「イージーフォールディングアダプター」の発売開始により、Tartaruga Type SPORT の折畳み性能と使い勝手は、格段に「進化」する事になりました。
「こんなパーツを待っていた!」と、多くの既存ユーザーの皆様から、賞賛の声を多くいただくと共に、それまで折畳み性能でご購入を躊躇していた、多くの皆様にTartaruga Type SPORT の楽しさを、享受いただく間口を大きく開く事となりました。
また、基本性能として持っていた、前後輪を取外して小さく折畳む「フルフォールディング」と、「イージーフォールディングアダプター」を使用する「イージーフォールディング」の、二つの折畳みスタイルを手に入れた事で、Tartaruga Type SPORT の実用性は、状況によって折畳むスタイルを使い分けられという、他に無い大きな特徴ともなりました。
サイドビューを「フルフォールディング」と比較すると、2回り程大きく見える「イージーフォールディング」ですが、実はとても薄く折畳まれており、実際に輪行時に遭遇する殆どの場面で、収納性や取り回しにも充分に優れており、現在Tartaruga Type SPORT を新規でご購入いただくお客様の98%の方が「イージーフォールディング」形態でのご購入、ご使用をいただいています。
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