Tartaruga Type RECUMBENT その6(最終回)

Tartaruga Type RECUMBENT その6(最終回)

話を、Type RECUMBENT の開発に戻します。

台北ショーに展示した試作車両は、キャノピーと共に持帰り、キャノピーの走行実験を行なっただけでなく、車両そのもの各種走行テストを重ね、熟成を図りました。
ただ、どれだけトレールを変えた試作パーツを制作して、実走行試験を繰り返しても、Type FOLDING の胸のすく様な、軽快で気持ちいいハンドリングフィールの再現は、かないませんでした。
車両重量や重心バランス、ホイールベース、ホイールサイズの違いなど、基本仕様が異なる訳ですから、致し方ありません。
軽快で小気味良い、ライトウエイトスポーツ的な走りのType FOLDING と、安定感と安心感を重視した、ラグジュアリーな走りのType RECUMBENT と、そのキャラクターを明確に棲み分ける事にして、最終的に、そのキャラクターの中では、最上と呼べるニュートラルなハンドリングの味付けを施しました。

シートが滑ってしまう

リカンベントで最も重要な、シートポジションの調整は、専用設計で制作した巨大なシートが、長いメインフレーム上を、大きく前後に移動させる事で、小柄な方から、欧米の高身長の方までに対応できる構造になっていましたが、試作車両には、一点致命的な問題がありました。
巨大なシートの固定は、メインフレームの上部を構成する、向かい合わせに溶接されたTartaruga 専用パイプを、両側からクイックリリースレバーで、締めつけて固定する構造となっていましたが、固定する位置によっては、ペダリング時にペダルを強く踏込むと、簡単にシートが滑ってしまい、後ろへずれてしまいました。
原因は、二本のTartaruga 専用パイプの溶接は、同じパイプを所々にハシゴ状に並べてスペーサーとして溶接して、制作していましたが、このスペーサーの無いところで、シートをクランプすると、二本のフレーム自体が内側へ変形してしまい、本来のクランプ力が維持できないためでした。
タルタルーガ自転車タイプRそこで、ハシゴの間の空いた空間を埋める様に、厚さ7mmのアルミプレートを追加して、溶接する事にしました。
更に、クイックリリースレバーによるクランプ力を上げるために、特殊な大型レバーを採用する事で、この問題を解決しました。

逆手にとる決断

それでもなお、強烈にペダルを踏込むと、シートは後ろへ滑りました。
ただこれは、ある意味都合の良い現象でした。
リカンベントは、ペダルを漕ぐ(踏み込む)力を、効率よく使用する事が、最大の特徴です。
ペダル漕ぐ力を、効率よく使用する事ができるという事は、裏返すと、力の逃げ場がないという事になります。
逃げ場の無い、想定を超える力は、フレームの破壊につながります。
その為、想定以上の力(この定義が、とても難しいのですが・・・)に、耐えうるフレームが必要となるわけですが、頑丈で重い、戦車の様なフレームを作れば、強度的な面では問題なくなりますが、必要以上のフレーム重量増により、肝心の運動性能がスポイルされてしまいます。
そこで、この問題の解決策として、想定以上の力が加わった場合に、シートを後ろへ滑らせる事で、フレームやシートフレームの破壊を防ぐ、「ヒューズ」として活用する事を決めました。

Type R専用パニアバッグアダプター

タルタルーガ自転車タイプRクルーザーの様に使える、Type RECUMBENT の特性を更に活かすために、ラゲッジスペースの確保も外せない機能でした。
そこで、海外ブランドのリカンベントで多く見られた、パニアバッグの使える専用ラックを、専用オプションとしてラインナップに加える事にしました。
この経験が、この後に着手したType SPORT の開発時に掲げた、「自転車のSUV」に繋がる事になります。

パッキング

タルタルーガ自転車タイプR折畳み機能を持たなない、Type RECUMBENT のフレームは、どっかりと座れる巨大にシートもあり、その梱包状態をどうするかも、大きな課題でした。
台湾のPacific 社から日本へのコンテナ移動や、日本国内での配送など、流通上のコストを抑えた上で、搬送中の傷つき等のトラブルを防止する、効率の良いパッキンも必要でした。
Pacific 社滞在時に、様々な方法を実験して、「これだ!」呼べるベストなパッキングを見つけ、採用しました。

こうして、日本発信の本格的なリカンベント、Tartaruga Type RECUMBENT は、2003年11月に、発売となります。
発売後、著名な自動車評論家の方から、その乗り物としての基本性能を絶賛されるなど、高い評価をいただきました。