Tartaruga Type RECUMBENT その2

Tartaruga Type RECUMBENT その2

「日本からの発信を、デザイン的に具現化した、

もう少し本格的なリカンベントを作れないか?」
前回お話しした様な、体験と思考の中から、私の中にこの様な思いが芽生えました。
当時のヨーロッパ、特にドイツやスイスでは、燃料を燃やして駆動するエンジン、いわゆる内燃機関を搭載した自動車に対して、多くの一般市民を含めて、「あまり使うべきでは無い」という考え方が、浸透しつつあるように感じていました。
「何を、極端な事を・・・」と、思う反面、その様な思考がより広がって行くとすると、私の掲げた、「乗ってワクワクするヒューマンパワーの新しい乗り物 = エモーショナルビークル」というコンセプトが、よりその価値を、増すのではないかと考えた訳です。

リカンベント

「Recumbent = 横になった」という英語が語源の、自転車のひとつのカテゴリーです。
一般的に、背もたれつきのシートにもたれるように座り、結果的に寝そべる事で、空気抵抗が抑えられ、効率のいいペダリングもできるため、平たん路ではよりスピードを出すことができます。
因みに、弊社のType FOLDINGは、セミ・リカンベントと区分けされています。

リカンベントの可能性

2001年頃の日本市場では、Tartaruga Type FOLDINGの登場もありますが、雑誌等のメディアでも、リカンベントに関する特集が組まれるなど、ちょっとしたリカンベントブームの様なものがありました。

殆どのリカンベントが、ヨーロッパやアメリカ発のブランドだった為、情報の多くが、「ヨーロッパでは既に人気の・・・」とか、「アメリカ西海岸で人気の・・・」などの文字が、踊っていていた事もあり、私自身もそう言うイメージを持っていました。
ところが、実際にヨーロッパや、アメリカに行ってみると、「リカンベント? あ~、ヒゲとサンダルね!」と揶揄される、いわゆるちょっと変わった、フリークだけが好む、乗り物扱いでした。

最も驚いたのは、勿論、全員が全員ではありませんが、本当に、髭を長くのばし、サンダルを吐いた、同じ様なスタイルの「人々」が作り、同じ様な人々が購入する、独特のマーケットが、実際に当時そこにありました。

高効率の先にあるもの

私の目から見た、当時のこの現実は、「リカンベントは、高効率な乗り物」というこの考え方が、「高効率こそが正義」という、一種の頭でっかちで理屈最優先の、一般人が入って行き辛い世界を、形成している元凶の様に映りました。
そのせいで、リカンベントの持つもっと大きな可能性が、スポイルされてしまっている様にも見えました。
「それでは、もったいないな・・・」
この思いが、日本人としてのアイデンティティを再認識していた当時の私に、前出の「日本からの発信を、デザイン的に具現化した、もう少し本格的なリカンベントを作れないか?」に、ダイレクトに繋がっていきました。

自らのデザインテイストの起源

タルタルーガ自転車タイプR自らのアイデンティティの再認識に取り掛かり、最初に私が行ったのは、自分のデザイン思考の起源を、自己分析してみる事でした。

物心ついて以来、私の記憶する限り、デザイン(カタチ)を意識して、好きになった物たちを列挙すると、以下のようなリストになりました。
マッハ号、ウルトラホーク1号、ウルトラホーク3号、マットジャイロ、マジンガーZ、ライディーン、ミレニアムファルコン、エンタープライズ号(スタートレック TMP版)、トヨタ・コロナ(T140系)、ホンダ・トゥデイ(初代、マイナーチェンジ後のM-JW2型は、自分で最初に購入した自動車になります)、ホンダ・インテグラ(E-DA5型クーペ カッコインテグラ 2台目に購入した自動車)・・・

子供の頃の印象が強いため、アニメや特撮物関連が多いですが、幼少期に好きだった‘マッハ号’を除くと、昔から直線基調のデザインを好み、特に、直線と張りのある曲線の組合せを好むようでした。

中でも印象に残っているのが、ライディーンのデザインで、飛行機形態のゴッドバード変形後のリアビューが、大好きでした。
後に、Type R のスケッチを書き始めた時に、真白な紙に青い色鉛筆で最初にスケッチしたのが、このゴッドバードのリアビューでした。

では、何故自分がこのような嗜好になったのか、さらにその起源を突き詰めて行くと、幼少期から身の回りにあった、古い日本建築の屋根や、神社の鳥居の形状の持つ、凛とした曲線と直線の組合せに有るのでは無いかという結論に至りました。

日本の伝統的な建築美に根ざすこのテイストを、フレームデザインに取り入れる事で、自分が作るべきリカンベントの形が作れるのではないかと考えました。

つづく