Tartaruga Type RECUMBENT その3
- 2018.10.16
- タルタルーガ
- Type RECUMBENT, 自転車, 開発
自らのデザイン思考の根源を、「日本の伝統建築」に
見出した私は、日本発信のリカンベントを作るという、当初の目的とも合致し、理想的なコンセプトになるとの結論にいたり、そのデザインの検討に取り掛かります。
BikeE
その当時、本格的なリカンベントと、Type FOLDING の中間的な存在として、BikeEというブランドの商品がありました。
このBikeEをはじめ、当時 Rance、M5など欧米リカンベントブランドの、日本マーケットにおける、輸入販売代理店をやられていたのが、弊社製品の販売代理店でもあった、ミズタニ自転車さんでした。
ミズタニ自転車で、取扱われているリカンベントブランドの中でも、BikeE は最も売れているブランドの様でした。
そんなある日、ミズタニ自転車の専務さんから「BikeE 社と、突然連絡が取れなくなったんだよ。」と言う話を伺いました。
その後も状況は変わらず、結局、何らかの事情で、突然倒産してしまったとの事でした。
弊社としても、当時 Type FOLDING から本格なリカンベントにステップアップする、その中間に、BikeE があり、市場にスムーズな商品構成が出来ており、その存在自体が、Type FOLDING の販売にも、貢献してもらっていると感じていました。
ミズタニ自転車も同様の感想を持たれていたため、「実は、弊社でもう少し本格的なリカンベントを開発しようかと思っているんです。」と伝えたところ、「うちで売るから、是非作ってよ!」と言う事になり、ジオメトリーは BikeE を参考に進めるとが決まりました。
造り手と売り手の考えが、完全に一致した事で、一気にこのプロジェクトが動き始めます。
余談ですが、BikeE の製造は、ジャイアント社が行なっていました。
私個人としては、「リバイブ」の件への、リベンジという思いもありました。
「やられたらやり返す!」です。
単にシンプルで済ませたくない
デザイン作業を開始して、最初に意識したのは、単にシンプルなフレームデザインには、したくないというものでした。
軽量化や、製造コストを優先すれば、当然、シンプルなフレーム構造が合理的になるのですが、それはすでに他社が色々やられているので、私が改めてやる意味を感じ取れなかったからです。
とはいえ、重いフレームを作りたいわけは無いので、多少複雑でも魅力有る形状と、それに見合った、高いフレーム剛性を確保する事で、折合いをつけたいと考え、先ずは、思うがままにスケッチを開始しました。
前回も述べたように、記憶を頼りに、最初にゴッドバードや、エンタープライズのリアビューを描きました。
そこから、二本のフレームが、突き出て終わるというアイデアが浮かびました。
その二本のフレームは、Type FOLDING 開発時制作した、弊社オリジナルチューブを、向かい合わせになる様、横に倒して使用する事で、安定感のある魅力的な形状となる上、ブランドのアイデンティティとしても機能します。
また、コンセプトとした「日本の伝統建築」の、屋根のフレームワークにも、共通点を見出すことが出来ました。
サイドビューは、直線とカーブの組合せを用いて、スピーディーなイメージを持たせる事を意識しました。
フリーハンドで、多くのスケッチを描いていく中で、「これだ!」と言える形状が浮かびあがります。
ひらめいたラフスケッチをベースに、当時使用していた2次元CADで図面化して、出来上がったCADデータを使用して、2次元のレンダリングを仕上げました。
雨の日にも乗れる
その1でお伝えした Type FOLDING ご購入者の方々からのフィードバックにあった、「雨の日以外、毎日乗っています。」という現実に対して、「じゃあ、雨の日にも乗れる、乗り物を作ろう!」との思いを持っていました。
この思いも実現する為に、出来上がった2次元レンダリングをベースに、取外しが可能で、コンパクトに仕舞える、専用のキャノピーも同時に制作する事を決め、キャノピーの構成とデザインも進めて、キャノピー付きのレンダリングも完成させました。
つづく
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