Tartaruga Type R専用キャノピーセット その3
- 2018.11.20
- タルタルーガ
- Type RECUMBENT, 自転車, 開発
Type RECUMBENT 専用キャノピーセット
に関する内容が、思いのほか長くなってしまっているので、前回、前々回分を含めて、「Type RECUMBENT 専用キャノピーセット」とタイトルを改変して、分ける事にしました。
Type RECUMBENT 専用キャノピーセットの最終回です。
バキュームフォーミング(真空成形)で、量産を行ったキャノピー部本体は、専用の治具にセットされて、CNCによるカット加工を施し、キャノピー部本体が完成しました。
使用する材料の、規格や、型代のバランスから、十分に巨大なキャノピー部でしたが、Type RECUMBENT に装着して、ある程度高身長のユーザーも含めて、「雨の日でも乗れる」レベルの空間を作るには、それでも尚、大きな空間を覆ってあげる必要があり、視界に影響を及ぼさないルーフ部分と、後ろからの吹き込む雨を防ぐ、覆いの部分は、耐水性のテント生地を使用して、キャノピー部本体に真空成形のサプライヤ内で縫製してもらいました。
雨天走行試験
設計どおりに仕上がったキャノピーを、実際にType RECUMBENT の試作車両に装着して、雨の日に走行試験を何回も実施しました。
その結果、形状的には、風切り音や空気の巻き込みは改良されて、狙いどおりの十分に実用性のある商品に仕上がっていました。
ただ、同時に、いくつかの問題点も浮上しました。
雨漏り
雨の中、長時間の走行を続けると、キャノピー部本体とルーフ部のテント生地との縫製部分から、雨漏りが発生しました。
その対応策として、アウトドア用のドームテントなどの縫製部に多用されている、シーリングテープをキャノピー内部から熱溶着して対応することにしました。
この作業用に、縫製箇所の形状にピッタリ沿う形の治具を、急遽木工で手作りして、工業用ヒートガンを購入して、自分達でこのシーリング作業を行いました。
視界の確保
自動車のフロントガラスと異なり、構造的にワイパーをつけられない本製品の場合、雨の量や強さにもよりますが、キャノピーに小さな水滴が付着して、視界を遮る場合がある事もわかりました。
当初、自動車のフロントガラス用に販売されている、撥水タイプ(雨粒を吹き飛ばすタイプ)のコーティング剤を使用すれば、簡単に解決できると考えていましたが、実際に塗布して走ってみると、走行スピードが時速40キロ位まで出ると効果がありましたが、常用域であるそれ以下の低速では、あまり効果がありませんでした。
そこで逆に親水タイプ(雨粒を馴染ませるタイプ)のコーティングを施してみたところ、こちらの方が、より効果があり、親水コーティングを最終的に採用しました。
こうした試験を繰り返した末、当初の仕様通り、使わない時には、コンパクトに巻き取って収納が可能なキャノピー本体と、専用フレームをセットにした、「Type RECUMBENT 専用キャノピーセット」は、98,000円という価格設定で、車両と同時発売しました。
恐らく、高額に思われるかもしれない、この価格設定ですが、その販売店様への納入価格は、製造原価のみで、弊社の利益は殆どのっていません。
先に述べた通り、高額な型代の償却も宣伝広告と捉え、一切含まれていません。
純粋に、私がどうしても作ってみたかった商品を、形にしたかったのです。
余談ですが、高額な投資を行い制作した、この巨大な量産型は、第2ロットの生産中に、バーナーで型を暖めるプリヒーティングの作業中に、真っ二つに割れてしまい、もう二度と再生産は叶わなくなってしまいました・・・
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