Tartaruga Type RE その2(最終回)
- 2018.12.11
- タルタルーガ
- Type RECUMBENT, 自転車, 開発
1993年にヤマハ発動機が発売した、ヤマハ PAS
(Power Assist System)が、世界初の電動アシスト自転車市販車両で、電動アシスト自転車の歴史は、ここから始まりました。
当時のアシスト比の上限は、入力(へダルを踏込んだ力)に対して、アシスト比が1:1(時速10㎞まで)が最大で、時速10㎞から24㎞まで、段階的にアシスト比が下がっていき、24㎞で0%になるという規格でした。
2008年に、一度大きな改定を受け、アシスト比の上限が1:2まで引き上げられましたが、これは主に、低速での登坂性能の向上を狙った改定でした。
完成した、Type RECUMBENT Electric Power Assist (Type RE)の試作車両は、開発当時(2004年)の、アシスト比の上限が1:1のレギュレーションにそった、アシストシステムを搭載していました。
それでも、前出の「本当に、自動車はいらなくなるな。」という印象を持ったのは、それまでの電動アシスト自転車に無かった、リカンベントタイプの乗車姿勢と、リカンベントならではのペダリング効率の恩恵に他なりません。
ドイツの電動アシスト自転車
現在、海外の自転車マーケットを席巻している、電動アシスト自転車ですが、各国や地域で独自のレギュレーションがあります。
電動アシスト自転車が、最も熱いドイツでは、モーターの出力によりカテゴリーが二つに分かれており、日本の規格に近い出力250W以下のカテゴリーでは、時速27㎞までアシストが可能です。
私自身、実際にユーロバイク等の会場で、この規格に適合した様々な電動アシスト自転車に乗りましたが、アシスト比に関する考え方を含め、日本のレギュレーションの商品とは、かけ離れた強いアシスト感を得られます。
ここで面白いと思うのは、両方の規格とも、元々のアシスト上限が時速25㎞までとなっている点です。
この上限に対して、日本では、絶対に超えないように、時速24㎞までとして試験を行います。
原付バイク(規定上50㏄以下)のエンジンサイズが、49㏄に抑えられているのと同じ考え方なのでしょう。
対して、ドイツのそれは、プラスマイナス8%の誤差が認められる為、各メーカーは、時速27㎞でアシストが切れる様に作ります。
型式認定の取得
話を、Type RE に戻します。
日本国内で、電動アシスト自転車を販売する為には、国の定める認定機関である、日本車両検査協会で、日本のレギュレーションに適合しているか試験を受け、型式認定を取得する必要があります。
当然、Type RE もこの型式認定を取得しました。
この、電動アシスト自転車の型式認定を取得する工程は、私自身初めての経験だったこともあり、大変な労力と費用を費やすこととなりました。
また、多くは語りませんが、この工程についてだけで、本が一冊書ける程、様々な事も発生しました。
一月半ほどの期間をかけて、電動アシスト自転車の型式認定を無事取得しました。
量産
電動アシストユニットとバッテリーを除く、車両の生産は、台湾のPacific社にて行い、一度日本へ輸入したあと、当時大阪府高槻市にあったサンスター技研に送り、電動アシストユニットとバッテリーの組付けと、アシスト比の最終検査と簡単な走行試験を、全ての車両に行い、再度梱包するという、膨大な手間を掛けました。
最終工程の走行試験は、以前行ったイタリアのマラネッロにある、フェラーリの工場の、シェイクダウンを思い起こさせました。
本当に作りたかった物
こうして、世界初の電動アシスト付きリカンベント(当社調べ)Type RECUMBENT Electric Power Assist は、2005年4月に発売を開始しました。
このType RE のフレームは、電動アシストの付いていないType Rのフレームと、アシストユニット関連パーツ取付け用の補強等を除いて、基本的に同じです。
という事は、既に発売していた、Type R専用キャノピーを装着する事が可能です。
この組み合わせにより、当時私が思い描いていた「次世代の乗り物」が、完成したことになります。
残念ながら、当時は、私が期待していたほどのムーブメントが、生まれることは無く、色々な状況も絡んだ結果、Type RE は早々に生産を終了する事となりました。
時は流れ、何度かお伝えしている通り、電動アシスト自転車が、海外の自転車マーケットを席巻しています。
自分で言うのもなんですが、Type RECUMBENT Electric Power Assist は、10年早かった気がします。
また、1993年にヤマハ PASで、電動アシスト自転車の先陣を切ったはずの日本が、海外から取り残された、ガラパゴス状態にある現実も、何とも虚しく思います。
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