「Type FOLDING」誕生 その3 試作車両完成

「Type FOLDING」誕生 その3 試作車両完成

「乗ってワクワクするヒューマンパワーの 新しい乗り物」

を、作りたいとの思いからスタートした、Type Fの原型は、カネコレーシングというパートナーを得て、より具体的な設計が進み試作図面が完成し、いよいよ試作車両の制作がスタートしました。
FJ1600自体、フォーミュラカーの中にあって、当時既に主流になっていたモノコックフレームではなく、アルミ製スペースフレーム(パイプフレーム)が基本でしたので、カネコレーシングの持つアルミフレーム製作のノウハウを持ってすれば、難しいものではありませんでした。
ただ、自転車業界独特の規格があり、例えばBB(ボトムブラケット)部のネジ切りは、非常に特殊な為、フォーミュラマシン製作のマシニング工場を持ってしても、製作が不可能でした。
そこで、タイヤや、変速機等のパーツ取りも兼ねて、市販されていた16インチの小径車を購入して、このフレームを切断してBB部を取り出し試作機に再利用する事になりました。
フロントフォーク部も、ほぼそのまま再利用しました。

台湾での量産業者探し

試作車両の制作と並行して、私は勤務先のつてをたどって台湾の商社の方に依頼して、台湾での量産業者探しを始め、いくつかの会社をリストアップしてもらいました。
そのリストには、日本でも有名なブランドメーカーも、何社か含まれていました。
そこで、私も台湾へ向かい、商社の方と各社を訪問して、量産の可能性を探ってみましたが、ことごとく大変な数の「最低発注数量」を提示され、試作をしてくれる会社を探した時と同様、中々折り合いの付く会社が見つかりませんでした。
そんな中、最低発注数量的にも折合いの付くレベルで、ここなら作れそうだなというメーカーをようやく見つけ出しました。
決め手はこのメーカーのショールームに展示されていた、自社製自転車サンプルのデザインとクオリティーでした。
完成した試作図面を提示して、改めて打合せを行い、量産の見積もりを依頼、帰国後に受取った見積もりは、価格的にも折合いがつき、ここで量産を進める事を決めました。

「試作車が完成したよ。」

とのカネコレーシングさんからの電話を受け、確認の為カネコレーシングへと向かいました。
ガレージに入ると、アルミ生地むき出しのシルバーに輝く試作車両が、そこにありました。
図面では何回も確認していましたが、やはり立体物になると感動はひとしおです。
アミューズメントマシン開発の中で、何回も経験していましたが、頭の中で3Dモデルとしてクルクルと回っていたイメージが、実際に触れる現物としてそこにある瞬間は、プロダクトデザイナーにとって、最も興奮する瞬間です。
しかも、今回完成した現物は、人力とはいえ実際に乗る事の出来る、駆動装置付きの乗り物です!

これは、初めての体験でした。

早速、試乗(シェイクダウン)したところ、狙い通りの開けた視界の気持ちよさと、路面の近さがもたらすより速いスピード感、ペダリングのダイレクト感が十分にあり、更に興奮しました。
この試作車は、シートの背もたれ部をだけを取外し、フレームとハンドルステムを折畳む構造でしたが、全ての折畳み機能もスムーズに動き、唯一気になった、「ハンドリングの独特のクセ」を除けば、素晴らしい試作車が完成しました。

塗装が必要

むき出しのアルミならではのシルバーの輝きは、それはそれでカッコ良かったのですが、今後のプレゼンでの見栄えや、何より素材表面の酸化防止処理の為にも、塗装を施す必要があります。
丁度そのころ、アミューズメントマシンの塗装でお付き合いいただいていた、カドワキコーティング さんが、自転車のカスタムペイントを新しい事業として始められていた事を知っていたので、完成した試作車両を引き取ったその足で、塗装を依頼すべく、迷わずカドワキコーティングさんへと、直接向かいました。

つづく