「Type FOLDING」誕生 その5 Pacific Cycles のジョージさん
- 2018.04.03
- タルタルーガ
- Type FOLDING, 自転車, 開発
「この商品を量産したいのなら、うちで作りませんか?」
Pacific Cycles のジョージ・リン社長の申し出は、本当に私をびっくりさせました。
ただ、この時既に台湾の量産業者を決め、見積もりも取れていて、東京国際自転車展終了の翌日から、台湾へ飛び量産へ向けた具体的な打合せを行う予定となっていたため、その事をジョージさんに説明すると「それは残念ですが、縁がなかったね。じゃあ、がんばってね。」と声をかけていただき、握手をして別れました。
御一行がブースを去られた後、「今まで、試作の業者探しの時も、量産の業者探しの時も、常に殆ど相手にさえしてもらえず、こちらから懇願してようやく自分の考えを理解してくれる方々に巡り合えた事で、何とかここまで進めてこられた。なのに相手から、うちで作りませんかなんて言うオファーを貰えるなんて、運命以外の何物でもないのではないか。そんなオファーを、簡単に断って良いのか?」という葛藤が、頭の中に巻き起こりました。
30分程の脳内葛藤の末、もう一度ジョージさんと会って話をしたくなり、展示会の会場を探し回ってみましたが見つからず、同行されていた日本のメーカーさんのブースを訪ねてみましたが、「もう帰っちゃったんじゃないかな。」との事でした。
「もしまだあの社長が会場にいらして、お会いされたら、もう一度私が話をしたいので探していたよとお伝えください。」とお願いして、ブースへ戻りました。
強い願いが通じたのか、それから1時間後位に、ジョージさんが戻ってきてくれました。
今回は、通訳をして頂ける方の同行はなかった為、私のカタコト英語でわざわざ戻って来ていただいたお礼を伝え、「折角あの様な申し出をいただいたのに、このままお別れするのは忍びない。既にお伝えした通り、台湾の別な工場で量産の予定を立てていて、明日から台湾へ行くのですが、一度社長の工場を見せていただけないでしょうか?」と尋ねると、「勿論、歓迎しますよ!」と快諾を頂き、3日後の工場訪問のアポを取り再び別れました。
台湾出張
自転車展終了の翌日、展示していた試作車両1台と試作用の最終図面を携えて台湾へ飛びました。その日は台湾への移動のみとし、翌日が終日、台北にある量産を予定している会社との量産へ向けた打合せ、その後は台中にある自転車関連業者を何社か回る予定でした。
台湾到着後、現地の商社社長と今回の出張日程に関して打合せを行なった際に、急遽決まったジョージさんの会社訪問の件を伝え、アポが本当に取れているか、電話で確認してもらいました。
「ちゃんと取れていましたよ。」との報告に、ホッと胸をなでおろしました。
量産予定業者との打合せ
翌日は、朝から量産予定業者の社長を始め、開発セクション、生産部門営業部門の各リーダーが同席して、量産へ向けた打合せでした。
先ずは、持参した試作車両に、メンバー全員に乗ってもらい、商品説明と設計のポイントを説明しました。
持参した試作車両には、一点修正したい欠点がありました。「ハンドリングの独特のクセ」です。
特に最初の漕ぎ出しの際に、ハンドリングがふらついてしまい、走行中も直進安定性に欠け、常にセンターを探しながらハンドルを操作させられる様なクセが有りました。
この欠点の話をして、「私は自転車の設計に関しては、全くの素人なので、どうすればこの問題を解決できるのか見当がつきません。皆さんは自転車設計のプロフェッショナルなわけですから、解決策をご提示頂きたい。」と投げかけたところ、「それは難しい問題ですね・・・」との回答の後、全員が口をつぐんでしまいました。
しばらく待ちましたが、沈黙が破られることは無く、仕方なく解決策に関してはいったん先送りして、量産へ向けた大まかな日程等に話題を変え、打合せを続けました。
休憩時間に、改めてこの会社のショールームを見に行き、一点気が付いたことがありました。
一見、よくできている様に思えていた各車両サンプルでしたが、よくよく見ると、どこかで見たようなデザインや、機構で構成されている商品ばかりでした。
結局、その後も問題点に関する提案は全く出てこず、その日の打合せは終了し、持参した図面と試作車両を持って、ホテルへと戻りました。
ホテルへ向かう車中で、一気に不安な気持ちが、広がりました。
つづく
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