Tartaruga Type RE その1

Tartaruga Type RE その1

ドイツを中心に、海外の自転車マーケットでは

電動アシスト自転車が全盛です。
日本でも、今年あたりからスポーツ電動アシストとして盛り上がりを見せている、電動アシスト自転車ですが、弊社では2005年に、Type RECUMBENT Electric Power Assist (Type RE)という商品を、開発し量産しました。
当時の私は、真剣に「自動車に代わる、次世代の乗り物を作りたい。」との思いを描いて、この商品を、開発しました。
今回は、この商品の開発時のお話をしましょう。

以前お話をした通り、2003年11月に、日本発信の本格的なリカンベント、Tartaruga Type RECUMBENT を発売したわけですが、その開発段階において、私の頭の中には、既にこの電動アシスト化の構想がありました。

モーターの選定

当時、電動アシスト用のモーターやバッテリーを提供しているメーカーは、極限られていました。
ヤマハやパナソニックなど、ママチャリタイプの電動アシスト自転車を製造しているメーカー以外では、ハブモータータイプの商品が、わずかに存在していたくらいで、殆ど選択肢は無く、モーターの選定に苦慮していたところに、サンスター技研製のモーターと出会います。

「サンスター」と聞くと、歯ブラシや歯磨き粉など、オーラルケアー用品のイメージが強いかと思いますが、そのグループ会社である「サンスター技研」は、オートバイ市場においては、ディスクブレーキ用のローターで、世界トップシェアーを確保しています。
ホンダや、ハーレーダビッドソンを始め、名だたるブランドのオートバイの、ディスクブレーキ用のローターには、SUNSTAR の刻印をみる事ができます。
残念ながら、現在では生産が終了してしまいましたが、当時そのサンスター技研では、独自発想の電動アシストユニットを開発、生産していました。

2003年当時の、第一世代のサンスター技研製モーターアシストユニットは、専用のBBに組み込まれたギアを、隣接して取付けるモーターユニットと特殊なチェーンでつないで駆動するという、とてもユニークな構造でした。

この構造により、その他のアシストユニットに比べて、フレームのわずかな変更で、電動アシスト化が可能な点が、最も魅力でした。

レイアウト

電動アシスト化には、モーターユニットと、バッテリーを追加する必要があります。
自転車部品としてみた場合、それぞれが相当な重量とボリュームとなるこの二つのパーツを、どこにどのように搭載するのかが、最も大きな課題でした。

タルタルーガ自転車タイプRE一般的に、リカンベントは、ペダルを漕ぎ初めの時に、ハンドルのふらつきが発生します。
Type RECUMBENT もかなり抑えられているとはいえ、やはりこの感覚は否めませんでした。
また、その乗車ポジションの都合上、立ち漕ぎができない為、上り坂に弱いとされています。
この、二つの弱点を、電動アシスト化により解決したいとの考えがありました。
考察を重ねた結果、BBの直下に、重量のあるモーターユニットと、バッテリーを配置する事で、ペダル漕ぎ初め時の、ハンドルのふらつきを、大幅に抑える事が可能であることに気が付きました。
名付けて「ミッドシップレイアウト」です。

メインフレームの改造

タルタルーガ自転車タイプRE基本レイアウトが決まると、モーターユニットと、バッテリーを実際に取付ける為の、メインフレームの改造に着手しました。
この作業は、サンスターのユニットを選択した事で、メインフレームへのわずかな改造と、それぞれのマウント用専用パーツ2点を、新規で設計製作する事で、比較的楽に実現できました。

タルタルーガ自転車タイプRE何ロット目かのType RECUMBENT の量産タイミングに合わせて、電動アシスト用のフレーム試作を行ったこともあり、とてもクオリティーの高い試作フレームが、短期間で完成しました。
完成した試作フレームに、早速モーターアシストとバッテリーを取付け、Pacific社の周りで試乗を行ったところ、まさに自分の想い描いていた通りの、次世代の乗り物がそこにありました。
「本当に、自動車はいらなくなるな。」と、ペダルを漕ぎながら、思わずつぶやいてしまったことを、今でもハッキリと覚えています。

つづく