「Type SPORT」誕生 その5 REACHとの差別化 コンセプト編
- 2018.04.27
- タルタルーガ
- Type SPORT, 自転車, 開発
2001年にType FOLDING を発売して以来
Type RECUMBENT、Type RECUMBENT Electric Power Assist と発表してきていた事もあり、「Tartaruga = リカンベント」というイメージが、市場に定着しかけてしまっている様に感じていた、当時の私にとって、「REACH」の最終試作車両完成後、そのTartaruga バージョンを作る機会を得たのは、とても幸運な出来事でした。
Tartaruga バージョンの商品名を「Tartaruga Type SPORT」(タルタルーガ タイプ ‘スポルト’)と決め、「REACH」と「Tartaruga Type SPORT」との、製品としてのキャラクターの差別化を、どう図るかという点を、先ず考える事にしたのですが、このキャラクターの差別化を決めるのに、かなりの時間を費やすこととなります。
Tartaruga Type SPORT のキャラクター
ベースモデルである「REACH」が目指していたのは、「折畳めるロードレーサー」だったわけですが、以前にも書いた通り、それほどスポーツ自転車に対して、興味自体を持っていなかった当時の私が乗っても、「これなら欲しい!」と思えた、最大の特徴は、その乗り心地と、ハンドリングの素直さでした。
こんなに気持ちよく走れる車両を使って、何をするのか?
この疑問に対する答えこそが、自分の求めている回答だと考えた私は、様々な可能性を検討していきました。
コンパクトに折畳めるという機能を除いて、単純にA地点からB地点への移動ツールとしての自転車を考えた場合、スピードや走りの性能だけを比較すると、例えばカーボンフレームのフルサイズのロードレーサーの方が優れている訳です。
では、逆に私が作るべき「Tartaruga Type SPORT」のアドバンテージは、何なのかについて考えてみると、以下のポイントがあげられました。
1. 工具等を使うこと無く、コンパクトに折畳める
2. 451サイズのホイールを履いた小径車である。
3. 小径車なのに、乗り心地と、ハンドリングの感覚がとてもいい。
これらの特徴を、最大限に活かせる使い方として、この車両に乗って、行ける処まで行って、疲れたらコンパクトに畳んで、電車やバス等を使って、帰ってこられるという使い方があげられます。
勿論、その逆で、コンパクトに畳んで、電車やバス、飛行機等を使って、大きく移動して、着いた先で、この車両に乗って楽しむのもありです。
いわゆる、「輪行」と呼ばれる使い方になります。
目指すべきは、「自転車の SUV」
当時、スバル(富士重工)の「アウトバック」という自動車が、売られていました。
以前から、海外市場では使用されていた商品名のようですが、日本市場への投入は、2003年になります。
私の記憶では、「SUV = Sports Utility Vehicle」という名称を、日本市場に定着させた商品だったと記憶しています。
この、日本市場に初投入された「アウトバック」は、当時のスバルの主力商品だった「レガシー・ツーリングワゴン」をベースに、最低地上高を50㎜あげて、細かなアレンジを加え「SUV」として発売されました。
熟慮の末、この「SUV」というコンセプトこそが、私が作るべき「Tartaruga Type SPORT」だという結論に至りました。
「自転車の SUV」です。
前出の「輪行」という使い方に対して、荷物がたっぷりと詰め込めて、取付けもしっかりした、専用設計のキャリアーを前後に装着する事で、小径車である事を活かして、荷物を積載した際の低重心化も図れ、その乗り心地を含む、走行性能と折畳み機能を、最も活かした使い方につながるのではないかという発想です。
また、我々が最も重要視した、乗り心地の良さは、長距離の使用になればなるほど、活きてくるはずだとも考えました。
前後専用キャリアー
こうして、「自転車のSUV」を目指すことにした私は、そのユーティリティースペースとしての前後専用キャリアーのデザインに、取り掛かりました。
一般的に、自転車のキャリアーは、あくまで後付けのパーツで、お世辞にもかっこいい物とは言えませんでした。
そこで私は、取って付けた様なキャリアーでは無く、前後にキャリアーを付けた際に、より車両がかっこよく見える様な、デザイン的に車両との一体感のあるキャリアーを目指し、多くのスケッチを起こしました。
また、フレームは折畳むことが可能なので、メインキャリアーとなる、リアキャリアーが付いていても、ついていない時と同じサイズとなる様、折畳みの操作を行うと、自動的にリアキャリアーも折畳める、リンクの設計が盛り込まれた物を目指しました。
パニアバッグ標準対応
さらに、その専用リアキャリーには、パニアバッグ(自転車用のバッグ)の取付けが可能な機能を、標準で装備する事により、そのユーティリティーは、飛躍的に実用的なものになると考え、サイズと機能性から、オルトリーブ社のスポーツローラークラシックという商品をモデルに、このバッグが簡単に着脱でき、取付けた際にもより安定感が増すよう、パニアバッグ用のアダプターを標準で付属させることにしました。
つづく
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