Museum Pacific Cycles 後編

Museum Pacific Cycles 後編

Pacific Cycles 社新社屋2階に開設されている

Museum Pacific Cycles に関するお話のつづきです。
今回は、展示内容に関する説明と、特に気になる商品の解説を行います。

歴史的な車両

タルタルーガ自転車MuseumPacificCyclesパネル展示で、自転車の大まかな歴史や力学の基礎を学んだ後、車両の展示がスタートします。
車両の展示は、カテゴリーごとにセクション分けがなされていて、各カテゴリー別の車両を観ることができます。
最初のセクションは「歴史的な車両」で、下段には1908年製造のフランス製車両や、1950年製造のアメリカ製車両が、上段には、Pacific Cycles 社が、製造や開発に携わった1984年頃からの初期の製品が並びます。

小径車、折畳み自転車

タルタルーガ自転車MuseumPacificCyclesタルタルーガ自転車MuseumPacificCycles次は、2ブロックを使った「小径車、折畳み自転車」の展示です。
ブロンプトンや、アレックスモールトンなど、一部他社製造の車両もありますが、そのほとんどが Pacific Cycles 社で製造された車両で、いかにこの分野が得意な会社なのか、容易に理解できます。
弊社 Type FOLDING の金子レーシング製試作車両と量産版、懐かしい Type RECAMBENT も、このセクションに展示されています。
弊社製品以外では、以前当ブログでご紹介した岡田さんが手がけた「GAAP」や、「Kahenshiki KOMA」なども、実は Pacific Cycles 社製です。

マウンテンバイク、ロードレーサー

タルタルーガ自転車MuseumPacificCycles一般的な自転車製造工場では、最も多くのシェアを占めると思われる、この二つのカテゴリーが、ひとつのセクションにまとめられています。
さらにそのほとんどが、サスペンション構造をもつダウンヒルバイクで、黎明期の様々なサスペンションシステムのリンク構造を持つ車両から、最新のモデルまで展示されています。
海外では、その戦績から有名になった「Banshee」も、全て Pacific Cycles 社製です。

e バイク(電動自転車)

タルタルーガ自転車MuseumPacificCyclesヨーロッパを中心に、現在の自転車マーケットの主要カテゴリーとも言える、「e バイク(電動自転車)」のコーナーです。
そのヨーロッパ市場を牽引する、ドイツを代表するブランドが「r&m」社です。
日本では、「birdy(BD-1)」で有名なこのブランドも、創業者でデザイナーでもあるマーカス・リーズとハイコ・ミュラーが、自宅ガレージで制作した試作品を、ケルンで開催された「IFMA」ショーに出展、その試作品が、Pacific Cycles 社のジョージ・リン氏の目に留まり、量産化へ向けた開発を共同で行い、製品化へとつながりました。
その成功をベースに、今では「e バイクのr&m」として、ヨーロッパの e バイク市場のトップに君臨しています。
「r&m」のハイエンドモデルは、今でも全て Pacific Cycles 社製で、その実績から、他ブランドからも、様々な革新的なコンセプトの商品開発や、製造の依頼が持ち込まれています。

リカンベントとハンドサイクル

タルタルーガ自転車MuseumPacificCycles人が、ペダルを漕いで進む乗物の、「効率」を追い求めた際の、ひとつの到達点が「リカンベント」だと言われています。
ヨーロッパ、北米、オーストラリアなど、世界中の著名なリカンベントブランドの製品もまた、その多くが Pacific Cycles 社製です。
また、足に何らかの障害を持った方々向けのハンドサイクルも、多くのブランドの製品を手掛けています。

スペシャルニーズ

タルタルーガ自転車MuseumPacificCyclesクライアントからの特別な要望に沿うために、一般的な自転車のカテゴリーの、どこにも属さない、車両たちです。
サポーティブプロダクトと呼ばれる、障害を持った方々向けの商品群をはじめ、フロリダっ子の青年が構想した、ペダル駆動の3輪ゴルフカートなど、様々な特殊車両が展示されています。

Pacific Cycles 自社ブランド

タルタルーガ自転車MuseumPacificCyclesタルタルーガ自転車MuseumPacificCyclesタルタルーガ自転車MuseumPacificCyclesタルタルーガ自転車MuseumPacificCyclesタルタルーガ自転車MuseumPacificCycles「BRIC cafe」の由来となった、Pacific Cycles が自社ブランド商品として展開している「Birdy」「REACH」「IFシリーズ」「Carry ME」のコーナーです。
製品化されなかった、各種バリエーションモデルの試作品や、貴重なレアモデルなどが展示されています。
弊社 Type SPORT の試作1号機も、「REACH」のコーナーに展示されています。

屋内試乗コーナー

タルタルーガ自転車MuseumPacificCyclesミュージアムの一角には、小規模ながら試乗が行える屋内コースがあり、イベント開催時には試乗も可能です。

PICK UP

ROWBIKE

タルタルーガ自転車MuseumPacificCyclesインラインスケートの生みの親 Scott Olsen 氏からの依頼を受け、Pacific Cycles が2003年に開発と、量産を行ったエクササイズバイク。
両足を踏ん張りハンドルを持って、ボートのオールを漕ぐように、サドルに乗せた体全体を、前後にスライドさせることで前進する4輪車。
2輪バージョンもあります。
当時としては画期的な、ケーブルステアリング機構が組み込まれていて、ハンドルを回すと、前二輪が、自動車の様に稼動してコーナリングします。
当初想定を上回る、販売台数を記録しました。

Mobility

タルタルーガ自転車MuseumPacificCyclesPacific Cycles が2007年に開発と、量産を行った製品です。
長きに渡って続いたエチオピア紛争で、無数に仕掛けられた地雷による被害で、足をなくされた方々の日常の移動手段として、国際赤十字により企画され、寄付金で運営されたプロジェクトで、合計2000台以上が、エチオピア政府に無償提供されました。
ハンドサイクルの様に、両腕でペダルを漕ぎ、ステアリング操作は、座っている椅子を回転させる(ひねる)ことで行います。
この車両を使っている人が、再度、地雷を踏む危険性がある為、その場合でも命を守る事を目的に、この椅子は厚さ4㎜の鋼鉄製となっています。
その椅子の「あまりの重量」に、当時の Pacific Cycles 社の塗装ラインのコンベアでは、強度が持たず、設備の改良が必要となりました。

この様に、なかなか他では見られない車両達を、間近で見られる、貴重なスポットとなっています。
台湾へ行かれた際に、立ち寄れてみてはいかがでしょうか。