「レ・ジェ」で挑んだダウンヒル 2005 その3 最終回
皆に別れを告げ、バイクパークを出発して
「ユーロバイク」の会場、ドイツのフリードリヒスハーフェンを目指した、私とライアンとステインの三人でしたが、暫くできていなかったメールチェックをする必要がありました。
そこで、「レ・ジェ」の中心部にある、ツーリストインフォメーション前の、広場にあるテーブルに陣取り、各自のノートパソコンを開いて、「Tartaruga アルプス第二支社」のアウトドアオフィスで、ツーリストインフォメーションから漏れるWifiを拾い、メールを確認、必要な返信をサクッと済ませました。
ロングドライブの始まり
一通りのメールチェックを終え、「レ・ジェ」を後にしたのは、既に午後4時を回っていました。
ドイツのフリードリッヒスファーフェンまでは、スイス、オーストリアを抜け、500km以上の距離があります。
その日は、行けるところまで行って、力尽きた辺りで適当に宿を探す予定です。
夕焼けに映える、アルプスの山々を望む、道幅の広い場所に車を止め、小休止して各々、思い思い写真を撮りました。
その後も、黄色いバンは、アルプスを快走していきます。
やがて、車窓の外を闇が包み、景色もよく見えなくなってきました。
今日はこの辺で・・・
「そろそろ、今夜の宿を探そうか。」誰からとも無く、そんな言葉が飛び出し、フリーウェイを降りて、宿探しを始めました。
と言っても、当時はまだスマホもなく、暗い路肩に時折現れる、近くに宿が有ることを示す「ベッドマーク」の標識を頼りに、行き当たりバッタリで宿を探しました。
運の悪い事に、その時フリーウェイを降りたローカルエリアには、その「ベッドマーク」の標識が、なかなか有りませんでした。
「ちょっとやばくないか?」と、誰もが思い始めた頃、ようやくマークを見つけ、暫く進むと、小さな宿にたどり着きました。
夕飯が食べたい
たどり着いた宿は、食堂を兼ねた、小さなペンションでした。
運良く、小さな部屋が空いていて、3人分のベッドが確保できました。
宿が決まり、ホッとすると、皆、一気に腹が減って来ました。
既に10時を回っていた為、食事ができるか確認すると、食堂は既に閉まっているので、今夜は提供できないと、一度は断られましたが、「何でも良いから、食べられるモノを!」と懇願すると、「じゃあ、何か作れるものを出しましょう。」と、食事を作ってくれることになりました。
外庭のテーブルに座り、ビールを飲みながら、料理を待っていると、「こんな物しか出来ないよ。」と、大きなプレートが、一人一枚ずつ運ばれてきました。
早速、手をつけると、マッシュポテトの上にチーズが乗り、その上に大きなソーセージと目玉焼きが更に乗った、名前もないその料理は、お腹が空いていた事もありますが、「超」が付くほど美味く、ビールにもぴったりで、今でも忘れられない味のひとつです。
三人共、貪るようにその料理を一気に掻き込み、夢中で食べました。
知らない街の朝
翌朝、早く目を覚ますと、ステインは既にどこかに出かけていました。
私も、どこだかもわからない小さな村で、朝の散歩に出ようと、カメラを片手に部屋を出ました。
今でも名前すらわからない、その小さな村には、宿からすぐの処に、小さな広場がありました。
その広場の片隅の、石のベンチに腰掛けるステインを見つけ近づくと、私に気が付いた彼が、おどけてポーズをとったので、すかさずシャッターを切りました。
その写真があまりにもおかしかったので、朝から二人で大爆笑でした。
アルプスを越えて
簡単な朝食を取り、宿を後にして、一路フリードリヒスハーフェンを目指します。
暗がりを走った前夜とは打って変わって、昼間に走るアルプスの道は、見事な山並みと、素晴らしい景観を、これでもかというほど見せつけてきました。
果てしなく続く、つづら折りの峠道を超え、時折車を止め、永久氷河の景観や緑の景色を眺めたりしながら、初めてのアルプス越えを、たっぷりと楽しみました。
リヒテンシュタイン公国
やがて、我々の行く手の路上に、突然「パスポートコントロール」が、現れました。
「何でこんなところで、パスポートコントロール?」と思っていると、どうやらスイスとの国境を越え、いつの間にかヨーロッパの小国「リヒテンシュタイン公国」に、入ったからでした。
2005年当時、リヒテンシュタインは、「シェンゲン協定」(ヨーロッパの国家間において国境検査なしに、国境を越えることを許可する協定)に、未加盟だった為の、今では貴重な出来事でした。
後に、2011年に加盟したようです。
こうして、長時間のドライブを終え、その日の夕方には、フリードリヒスハーフェンに到着、Pacific社のスタッフ達と合流しました。
翌日、「ユーロバイク」のブース設置を行い、その翌日から、その年のショーが始まったのでした。
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